コラム

私がめんたいこちゃんと呼ばれるまで(2)

続き

社会人になって間もなく、友人より浜崎あゆみのライブ遠征に誘われ、ついに初の福岡行きが決まる。2012年夏の事である。ライブ目的ではあったが、合間で精一杯福岡を堪能した。太宰府天満宮や、博多ポートタワー等お決まりの観光名所も抑えつつ、やはりテンションが上がったのは食べる・飲むの部分だった。

福岡は酒飲みにもってこいの街だ。毎日お祭りかの如くずらーっと並んだ簡易店舗。その暖簾をくぐれば誰でもすんなり夜の福岡に馴染んでいく。帰るころには皆親戚の様で、新幹線で5時間もかけてやってきたことは忘れ、思わず「またすぐ来ます!」と言ってしまうほど。私は一瞬で福岡の屋台文化に魅了されたのだった。

そして何より明太子。豊富すぎる明太子メニューにも圧倒される。手羽明太を食べ、明太子入りの鉄板を食べ、明太子丸々1本入りのラーメンを食べ、どこへ行っても、屋台でも、普通に明太子が存在していた。まぁ特産品なのだから当たり前なのだが、明太子が当たり前にある世界を目の当たりにして、どうやら私の中の潜在意識がむくむくと表面化してきたのはこの時あたりからかもしれない。

1ヶ月後、別の友人を連れて福岡へ行った。なかなか1ヶ月後に同じ旅行先に行くことはない。余程福岡に心打たれんていたんだなぁと今になって思う。そして「またすぐ来ます!」の通り同じ屋台へも行った。先月ここに来たことが忘れられなくて、女将さんの事が忘れられなくて、本当に帰ってきました。と熱い思いを伝えた。

女将さんは全く覚えていないようだったけど、以前と同じように温かく出迎えてくれた。そして以前と同じようにその場にいたお客さんともよく話して、東京に戻ってからその方の落語を見に行って、こういう出会い素敵だなぁ、、としみじみ思ったところまで鮮明に記憶に残っている。

そしてまた明太子。屋台でも食べたし、前回より少し踏み込んだ情報も得て、めんたい重を食べて、こちらでは見かけない福さ屋の明太子をお土産に購入すべくわざわざ路面店に行ってみたりもした。福さ屋までの道を迷っていたら、家の前を掃除中のおばちゃんが、「どこ行くの?大丈夫?」と声をかけてくれたのもほっこりする思い出だ。

2度の福岡旅行を経験した私はその後数年おとなしく、淡々とOL時代を過ごした訳だが、大きな行動に移さずとも無意識のうちに福岡を、明太子を、求めていたのかもしれない。旅行後から、友人が明太子情報を提供してくれた際に「それ知ってる!」という事が多くなり、「おおお!明太子アンテナすごいな。」と友人は思っていたそう。

そうして細々と明太子を愛でつつも、主として1日の大半を事務仕事に費やす毎日を数年続けていて、ふと気付くと、口を開けば愚痴しか出てこない陰気な人間になっていた。まあ、基本陰気な人間なので、今もですが、この時期は追い打ちをかけるようにネガティブオーラを纏っていたので、近寄りがたかったことだろう。仲の良い友人にもひたすら愚痴って、愚痴って、愚痴っていたことを本当に申し訳なく思う。今も申し訳ないなと思いながら愚痴りますが、、

そんなどブラックな私を救い出してくれた友人の言葉が「1人暮らししてみたら?絶対合ってると思うよ!」、「行きつけの居酒屋作ってみたら?いい出会いがあると思うよ!」「インスタグラム始めて見たら?せっかく明太子好きなんだから発信してみた方が良いよ!」これでまた私の明太子好きへの道が加速するのであった。

続く

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